初雪中キャンプの記

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雪でリフレクターを作ってみたり



今年は雪が少ない。例年ならばこの季節には雪が毎日のように降って通勤にも仕事にも支障が出るはずである。キャンプを始めた当初から、雪中のキャンプをすることを目標に掲げていたが、それが今年に限って出来なかった。何となく皮肉なものである。おかげで日常生活は快適である。

今回たまたまだが、連休と今年初の雪予報が重なった。ただただチャンスでしかない。しかし、なんと言っても初めての雪中である。雪でずぶ濡れになった体に寒さが染み込んできて、大変つらい目に合うのではないかと不安でもある。

しかし、この半年間雪中に向けてコツコツとギアを買い揃え、ロープの結び方を3つくらい覚え、タープの張り方も練習してきた。行かないわけにはいかなかった。

当日、荷物を車に詰め終えてから、キャンプ場に℡。ハンモック泊したい旨伝えると、苦笑いされたが快くオッケーしてくださった。

 

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出発時のザック

雪中だからといって、これといって特別なものは用意しなかった。レインウェアを上下持っていったのと、前の記事で書いたメレルのスノーブーツを履いていったくらい。要するにウェア以外は普段どおりの装備である。

あとは雪を触ることになるので防寒テムレスを持っていった。もちろん雪かきスコップも。
 

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タープ第一形態

13時頃、キャンプ場に到着。事前にハンモック泊と伝えておいたので、木の多いサイトを用意してくださっていた。ただただ感謝でしかない。

木と木の間にガイラインを張って、タープの設営もサクッと終わろうかというとき、なんだか嫌な予感がしていたのが当たった。隣のサイトにファミキャンが来たのである。正確に言えば、隣の隣であるが、隣のサイトが無人で、しかもこちらの方が坂の下側に当たるので、実際よりも近くに感じる。横に広いサイトにもかかわらず、真正面にスノーピークのテントを張られてしまった。これは落ち着かなそうだ。やむを得ず横にずれることにした(このとき、エリステを一本、雪の中に失ってしまった。春先になったら出てくるだろうか)

それまで割と落ち着いた天気だったのが突然、横殴りの雹に変わった。たまらず一時、車に避難する。とにかく風が強いのでDDタープの4×4は低めに張ることにした。その方が風を受け流しやすいだろうと考えたのである。風に煽られて飛ばされそうになり、設営中もどんどん雪の受け皿になっていく濃いコヨーテ色のタープを苦労してセッティングし、ハンモックもなんとか飲することが出来た。慌てまい慌てまいとゆっくりゆっくり設営していたら何と16時になっていた。設営に3時間もかけていたことになる。一体そんなに何をすることがあったのか、今となっては覚えていない。

 

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やりたかったこと

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鍋のサイズを誤った

 

もう夕食時も近いので、昼食もへったくれもないのであるが、とにかく何かいに入れるものが必要であったので、前回のキャンプで食べなかったパスタを作ることにした。なぜ食べなかったかというと、設営に時間がかかってしまい、食べる時間がなかったのだ。そのときはサイトを変更してもらったので、時間が遅くなったのだった。そう考えると、人目が気になるのが、設営の遅れを助長している原因なのだろう。

 

しかし、はっきり言ってパスタは失敗だった。作ったそばから冷めてしまうのだ。お湯を慎重に捨てて、盛り付けたら既に温かった。食べ終わる頃には、つけ麺かと思うくらいぬるかった。そもそもお湯を捨てるということ自体が冬キャンにおいては勿体無いのだ。温かさには高いコストがかかっている。それを無碍に捨てるなんてとんでもないことなのだ。雪中においては熱量は財産なのだ。

パスタを食べ終えて、デカフェ紅茶を飲む。まずい。味がしない。またもやお湯を捨てる。勿体無い。

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よく見ると相当奇妙な形である

夜に備えて薪を割っていると、風向きが変わったのか、背中側から風が吹いてきて、タープ内が風の通り道になってしまっていた。とても寒い。我慢がしきれずに風上側を閉じることにした。急ごしらえでやったので、タープが相当変な形になってしまった。しかし、暖かさは段違いに向上した。

ここで思いつきでハンモックも撤去してしまった。タープを低く張りすぎたため、地べたに座っていてもハンモックが頭の上でチラチラして落ち着かないし、床に銀マットを敷いたらゴロ寝出来ていいだろうなあ、と思ったからだ。あと、この時点で焚き火の煙がタープ内に充満していて目がものすごく痛かったため、身を低くして煙から逃れたかったというのもある。

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タープ内が広くなり、ゴロ寝ができるようになったので快適性が増した。それと、これでハンモックの難点である、冬場の肉厚シュラフのジッパー噛みまくって出入り非常に困難問題を解決することが出来た。むしろこれが一番の利点だったかもしれない。特にシュラフカバーと二重にしているときなんて最悪である。ジッパーが閉じなさすぎて、夜中にひとり泣き叫びたくなる。誇張ではなくて、本当に泣きたくなる。だから、床に寝るとシュラフに入りやすくなることは新たな発見であった。


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焼き芋を作ってかじりつつ、夕食のラーメンを作る。好きなときに好きなものを食べていいのが、キャンプのいいところである。家では色々と生活のリズムというものがあるので、こうはいかない。パック入りのカット野菜をバーナーで炒めて、バーナーで麺を煮込む。とにかく焚き火の煙がすごいのでバーナーが頼りである。ホームセンターで赤った薪が湿っていたのか、焚き火の仕方が下手くそなのか。雪でリフレクターを作ってみたら意外と暖かかったが、煙には効果がなかった。

最高に美味しかったが、体が冷えていたためか鼻が詰まっていて味がわからなかった。食べているうちに体が温まってきたが、鼻が通ったのは結局、麺と具を食べ終えてスープを飲んころだった。先にスープを飲めばよかったのか。やはり冬キャンに置いてお湯は宝だと気づく。あと、冬のバターは美味い。焼き芋につけたら良かった。

 

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タープの閉じた側から雪が侵入してきて驚く。ゴアテックスシュラフカバーがあるので大丈夫だろう、という安心感。

シュラフカバーは強い。ハンモック足元にダダダッという雨垂れを感じたときも、雪が吹き込んできてもシュラフカバーがあるからなんとかなる。おまけにGORE-TEXなのだから、という安心感は他には得難い。タープの結露も、荒げた鼻息もなんの気にもならない。シュラフだけだと肉が丸出しであるが、カバーをしてようやく腸詰め、という感じである。つまり形態が安定してるとか何とか。

 

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翌朝の様子。タープを低く張ったためか、滑り落ちて両側に溜まった雪が半端ではない。おかげで眠っている間に、だんだん寝床が圧迫されてくるという事態に陥った。深夜1時、耳元からお経が聞こえてきて目が覚めた。頭が以上に熱くて誰かにライトで照らされているのだと思った。殺されるんじゃないかと思ったが、お経は耳元で雪がギシギシと鳴る音で、頭が熱いのはシュラフをすっぽり被っていたからだった。くだらない土産話だが、いままでにない恐怖を味わったのは間違いない。山の怪奇譚とはこうやって生まれていくのかもしれない。

 

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マルシンハンバーグはいいぞ


朝食。今回唯一の焚き火料理。ほんとにキャンプの醍醐味はどこかよくわからないところで目覚めたあとの朝食であるよなあ。子供の頃、祖母の家に泊まって目覚めた木目の天井を見たときの、あのどこに来てしまった感。ドキュメント72時間でソロキャンしていた人がそんな事を言っていて、まさにそうだよなあ、と感じ入った次第だった。

このあとコーヒーを飲んで焼きプリンを食べて帰り支度。ザックに物を詰めて、タープをたたむだけなので早い早い。撤収時には幸い、雪は落ち着いていて穏やかに片付けができた。管理人さんに忘れ物はありませんか、と聞かれてペグを雪の中になくしてしまったよ、と伝えておいた。

さて冬の地べた泊がこんなにいいとは思っていなかった。ハンモックがいらないとなると、もっと荷物が減らせそうだ。こんどはウールブランケットを敷物にしてみるか。

またこよう。